介護業界の現状と課題とは?今後の見通しや課題に対する解決策
少子高齢化が進む日本では、介護サービスを必要とする人が増える一方、現場を支える介護職員の確保が追いついていません。
人材不足だけでなく、職員の身体的・精神的負担、給与・待遇、事業者の経営難、老老介護、ヤングケアラーなど、介護業界が向き合う課題は多岐にわたります。
今後も介護需要の増加が見込まれるため、介護人材を増やすだけでは十分とはいえません。
働きやすい職場づくりやICTの活用、外国人材の受け入れ、採用力の強化などを組み合わせて、持続可能なサービス提供体制を整える必要があります。
本記事では、介護事業者が直面している具体的な問題点や将来の見通し、そして採用難を乗り越えるために取り組むべき解決策を詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
介護業界の2025年問題/2040年問題
介護業界の将来を考えるうえで、「2025年問題」と「2040年問題」は避けて通れません。
高齢者の増加だけを見るのではなく、介護を必要とする人とサービスを支える側の人口構造をあわせて考えることが重要です。
2025年問題とは
2025年問題とは、日本の人口の大きな割合を占める「団塊の世代」が、すべて75歳以上の後期高齢者となることで生じる、さまざまな社会的課題の総称です。
一般的に75歳を超えると、医療や介護を必要とする人の割合が急激に上昇する傾向にあります。
厚生労働省の資料でも、医療および介護の需要がさらに増加すると見込まれており、地域全体で高齢者を支え、介護サービスを安定して提供できる体制づくりを急務とされています。
サービスを必要とする人が増える反面、高齢者を支える現役世代の人口は減少していくため、2025年は需給バランスが大きく崩れる転換点として警戒されていました。
2040年問題とは
2025年を通過したあと、さらに深刻な事態として懸念されているのが「2040年問題」です。
厚生労働省の「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ」では、85歳以上の高齢者が急増し、医療と介護の複合的なニーズを抱える人や、認知症の高齢者、身寄りのない独居高齢者が大幅に増加していく見通しです。
参考:2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ | 厚生労働省
サービス利用者の状態がより重度化・複雑化していく一方で、日本全体の生産年齢人口はさらに減少し、現場を支える介護人材をどのように確保するかが大きな焦点となります。
限られた人材で多様なニーズに対応するための抜本的な改革が、社会全体に求められているといえるでしょう。
介護業界が抱える深刻な8つの課題と現状
介護業界の課題は、人材不足をはじめ、職員の負担や待遇、事業経営、地域差などが相互に影響しています。
ここでは、介護業界が抱える主な8つの課題について解説していきます。
介護職における人材不足
介護業界における最大の課題は、慢性的な人材不足です。
厚生労働省が発表した推計では、2022年度時点で約215万人の介護職員が確保されていましたが、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員が必要とされています。
つまり、2022年度と比較すると、2040年度には約57万人も多く介護職員を確保しなければならない計算となります。
参考:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について | 厚生労働省
他産業との人材獲得競争が激化する中で、新たに数十万人規模の人材を採用し、定着させることは非常に困難だといえるでしょう。
介護職員の身体的・精神的負担

介護の現場は、働くスタッフの身体的・精神的な負担が非常に大きいという実態があります。
ベッドから車椅子への移乗や、入浴介助、排泄介助などは、職員の腰や関節に多大な負荷をかける重労働です。
加えて、夜勤によって職員の生活リズムが不規則になることも、健康を害する要因となります。
さらに、認知症の利用者への対応や、利用者の家族からの要望・クレームへの対応など、精神的なストレスを感じる場面も少なくありません。
負担の大きさが離職の引き金となるケースもあるため、労働環境の改善が急務です。
介護職員の給与・待遇
仕事の負担に見合った給与が支払われていないという待遇面の不満も、介護業界の深刻な課題です。
少子高齢化により、他産業との人材獲得競争が激しくなる中、賃金水準の低さは求職者が介護職を敬遠する大きな理由となっています。
国も危機感を抱いており、介護職員の処遇改善加算などを通じて、賃金・処遇の改善を人材確保の重要課題として位置づけています。
しかし、現場の職員全員に十分な還元が行き渡っているとは言い難く、さらなる待遇改善に向けた事業所ごとの自助努力が求められる状況です。
介護事業者の経営悪化
介護サービスへの需要が高まっていても、すべての介護事業者が安定して経営できているわけではありません。
厚生労働省の「介護事業経営概況調査」では、2024年度決算における赤字事業所の割合は全サービス平均で37.5%でした。
介護老人保健施設では49.3%、通所リハビリテーションでは48.6%に達しています。
参考:令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要 | 厚生労働省
また、東京商工リサーチの直近の年間集計では、老人福祉・介護事業の倒産件数が徐々に増えていることがわかります。

画像引用:東京商工リサーチ
上記の通り、2025年の倒産件数は176件に達し、過去最多を更新しました。
ヤングケアラーの問題
本来であれば大人が担うべき家事や家族の介護を、日常的に行っている子どもたち、いわゆる「ヤングケアラー」の存在が社会問題化しています。
親や祖父母の介護を担うことで、学校生活や友人関係、将来の進路に影響が生じる場合があります。
介護サービスの不足や制度上の課題などにより、子どもが過度な負担を担わざるを得ないケースがあります。
子ども・若者育成支援推進法では、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」が支援対象として明記されています。
したがって、行政や介護事業者が連携し、家庭内のSOSを早期に発見して支援に結びつける仕組みが必要となるでしょう。
老老介護・認認介護の問題
高齢者が高齢者の介護を行う「老老介護」や、認知症の高齢者が認知症の配偶者を介護する「認認介護」の増加も深刻です。
核家族化の進行や、施設に入居できない待機者の増加により、在宅で無理な介護を続けざるを得ない家庭が増えています。
介護者の体力や認知機能の低下により、服薬管理などが難しくなり、介護者と要介護者の双方が困難な状況に陥るリスクがあります。
家族への依存を減らし、外部の介護サービスを適切に利用するための取り組み、事業所側にも強く求められています。
高齢化する介護職員
利用者の高齢化だけでなく、サービスを提供する介護職員自身の高齢化も進行しています。
厚生労働省の資料では、介護関係職種全体の平均年齢は50.0歳であり、65歳以上の割合は14.2%に達しています。
さらに、訪問介護員に限定すると平均年齢は54.7歳、65歳以上の割合が24.9%となっており、特に訪問介護の現場で担い手の高齢化が目立つ状況です。
参考:介護人材の確保・介護現場の生産性向上の推進について | 厚生労働省
地域による介護サービスの格差

地域によって介護サービスの需要や供給状況が異なることも、介護業界が抱える課題です。
厚生労働省は、中山間・人口減少地域では介護サービスの需要が減少する中で、事業者や専門職を確保し、必要なサービスを維持することが課題になるとしています。
参考:2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ | 厚生労働省
大都市部では、介護需要の急増が見込まれており、需要に対応できるサービス基盤の整備が必要です。
人口構成や介護人材、事業所数などの条件は地域ごとに異なります。
住んでいる地域によって利用できる介護サービスの量や選択肢に大きな差が生じないよう、地域の実情に合わせた体制を整えていかなければなりません。
課題を放置することで起こる問題
介護業界が抱える課題を解決せずに放置し続けた場合、現場や社会にどのような悪影響が及ぶのでしょうか。
予測される主な問題について紹介していきます。
介護職員1人当たりの負担がさらに増える
人材不足が解消されないまま放置されると、現場で働く既存の介護職員1人当たりの業務量は必然的に増加します。
少ない人数で従来と同じ数の利用者をケアしなければならないため、休憩時間を削って働いたり、休日出勤が常態化したりする事業所が増えるでしょう。
業務過多の状態は、職員の肉体的な疲労を蓄積させるだけでなく、精神的な余裕も奪う原因となります。
結果として、心身のバランスを崩して休職に追い込まれるスタッフも出てくる恐れがあります。
必要な介護サービスを受けられない人が増える
事業所の経営悪化やスタッフ不足が限界に達すると、新規の利用者を受け入れることができなくなります。
その結果、自宅での生活が困難になっても施設に入居できず、必要なサービスを受けにくい人が増える可能性があります。
訪問介護などの在宅サービスも、人手不足で訪問回数を減らさざるを得ず、家族の介護負担が限界を超えてしまうケースが多発するかもしれません。
介護サービスの質を維持することが難しくなる

職員の負担が増加し、時間的な余裕がなくなると、利用者一人ひとりに寄り添った丁寧なケアを提供することは困難になります。
業務をこなすことだけで精一杯になり、利用者の小さな体調変化を見落としたり、コミュニケーションが希薄になったりするかもしれません。
さらに、疲労による集中力の低下から、転倒事故や誤薬といった重大なヒヤリハットや医療事故につながるリスクが高まる可能性があります。
安全で質の高いサービスを提供できなくなれば、事業所としての社会的信用は失墜してしまいます。
離職する人が増える
- 人材不足による労働環境の悪化
- 賃金への不満
- サービスの質低下に対する罪悪感
これらが重なると、多くの職員が「介護業界を離れること」を選択肢として検討しはじめるでしょう。
ベテラン職員が辞めてしまうと、新人教育を行う余裕も失われ、組織としてのレベルはどんどん下がっていきます。
「人が辞めるから残った人の負担が増え、さらに人が辞める」という負の連鎖に陥り、事業所の運営に支障が生じ、サービス提供の継続が難しくなる可能性もあります。
人材不足を解決するには、「何人採用したか」だけを見るのではなく、働きやすさやキャリア形成を整え、離職者が生まれにくい環境をつくることも重要です。
介護業界の課題を解決するための対策
介護業界の課題は、一つの施策だけでは解決できません。
採用、定着、処遇改善、人材育成、テクノロジー活用などを組み合わせ、限られた人材で持続的にサービスを提供できる環境を整える必要があります。
介護職の魅力を積極的に発信する
採用難を克服するためには、求職者に対して「自社で働く魅力」を積極的に発信し続けることが重要です。
世間一般には、介護業界に対して「仕事がきつい」「給与が低い」といったネガティブなイメージが根強く残っています。
しかし、実際の職場環境や評価制度は、事業者によって大きく異なります。
したがって、自社の採用専用サイトを構築し、以下のようなことについて詳しく伝えるようにしてください。
- 実際に働く職員のインタビュー
- 自社独自の取り組み
- 1日の仕事内容
- 職場の写真や動画
- 給与や各種手当
- 福利厚生や休暇制度
- 研修・資格取得支援
- キャリアパス
自社の採用サイトの中で、求職者の不安を先回りして解消し、魅力を伝えることが、採用成功への第一歩となります。
なお、介護職の採用サイトを充実させたい場合は、株式会社NOBUの介護業界専門採用サイト制作サービス「Creer+for介護」へ、ぜひお気軽にご相談ください。
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外国人介護人材の受け入れ環境を整備する
介護人材を確保する方法の一つとして、外国人介護人材が安心して働ける受け入れ環境を整えることも重要です。
そのためには、技能実習生や特定技能外国人などが安心して働けるよう、日本語学習のサポート体制や、異文化を理解し尊重する職場づくりを進める必要があります。
さらに、採用サイト自体も外国人を意識した作りにすることが有効です。
やさしい日本語を用いたり、多言語対応のページを用意したりすることで、日本で働きたいと考える優秀な外国人材へ、自社のメッセージが届きやすくなるでしょう。
介護職員の給与・待遇を改善する

他業界への人材流出を防ぎ、介護職員として長く働いてもらうためには、給与だけでなく待遇全体を見直す必要があります。
国の介護職員等処遇改善加算を活用し、取得した加算を基本給や賞与などの形で現場のスタッフへ適切に還元する仕組みづくりも重要です。
厚生労働省の調査によると、処遇改善加算を取得している施設・事業所で働く常勤介護職員の基本給や平均給与額は、1万円以上増加しています。
介護職員等処遇改善加算を取得している施設・事業所における介護職員(月給・常勤の者)の基本給等について、令和5年度と令和6年度を比較すると11,130円の増(+4.6%)となっている。また、平均給与額については、令和5年度と令和6年度を比較すると13,960円の増(+4.3%)となっている。
引用元:令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果のポイント | 厚生労働省
また、金銭面だけでなく、有給休暇の取得促進、夜勤手当の大幅な増額、育児休業や介護休業を取得しやすい風土の醸成など、福利厚生の拡充も重要です。
長く働き続けられる安心感を提供することが、定着率向上につながります。
教育・研修・キャリア形成を支援する
未経験からでも安心して働き始められ、将来にわたって成長を実感できる教育・研修体制の整備も有効な対策です。
入社直後の手厚い新人研修はもちろんのこと、資格取得にかかる費用を全額補助する制度や、勤務時間内に研修を受講できる仕組みなどの導入を検討してください。
また、「3年後にリーダー」「5年後にケアマネジャー」といった明確なキャリアパスを提示し、目標に向かって進める環境を用意することも、職員のモチベーションにつながります。
自身の成長を応援してくれる事業所には、向上心の高い優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。
ICT・AI・介護ロボットなどを活用する
職員の身体的・精神的な負担を軽減するため、最新のICT機器やAI、介護ロボットの積極的な導入も進めるべきです。
例えば、見守りセンサーを導入すれば夜間の巡視負担を大幅に削減でき、移乗支援ロボットを活用すれば職員の腰痛予防につながります。
また、スマートフォンやタブレットを使った介護記録システムを導入することで、手書きによる事務作業の時間を削り、利用者と直接関わる時間を増やすことができるでしょう。
テクノロジーへの投資は、労働環境の改善とサービスの質向上の両方を実現できる可能性が高いです。
雇用形態を増やして間口を広げる

限られた労働力層を確保するため、正社員での雇用にこだわらず、多様な働き方を認める仕組みを取り入れてください。
契約社員やパートタイマー、アルバイトなど、雇用形態を増やして採用の間口を広げることが効果的です。
「週3日だけ働きたい」
「日中の短い時間だけ勤務したい」
こうした、子育て中の人や、仕事と生活のバランスを重視する高年齢層などのニーズにも応えられるでしょう。
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まとめ
介護業界では、高齢化による需要増加と働き手の減少が同時に進んでいます。
人材不足、職員の負担、給与・待遇、事業者の経営難、老老介護など、複数の課題が関連しているため、一つの施策だけで解決するのは難しいでしょう。
介護サービスを将来にわたって安定して提供するには、処遇改善や教育、人材の多様化、ICT・AI・介護ロボットの活用などを組み合わせる必要があります。
すでに働きやすい制度や魅力的な職場環境がある事業者は、求職者へ正しく伝える努力も欠かせません。
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